MIND TRAIL 2020

奥大和 心のなかの美術館

  • MIND TRAILは、奈良県・奥大和地域の広大な自然を舞台に、自身の足で歩きながら作品を鑑賞する芸術祭です。2020年、世界中が新型コロナウイルスの感染拡大に見舞われ、多くの文化イベントが中止を余儀なくされる中で始動しました。インビジブルの山本は吉野町と天川村のキュレーションを担当。密を避けたオープンエアな環境で、身体を動かし自然と対話することで、コロナ禍で疲弊した人々の心に豊かさを取り戻す「心のなかの美術館」を目指しました。

    プロジェクト期間:2020年6月-2021年3月
    展示会期:2020年10月3日(土)- 11月15日(日)
    会場:奈良県 吉野町、天川村、曽爾村

  • 土地の精神性と呼応するキュレーション

    山本は吉野・天川の両エリアにおいて、土地に根ざした信仰や歴史を深く読み解くことから始めました。吉野の修験道や天川の水の文化など、目に見えない精神性をアーティストと共有し、場所の力を引き出すための対話を重ねました。井口皓太のインスタレーション、上野千蔵の水を撮影した作品、ニシジマ・アツシの凧の作品、細井美裕のサウンドインスタレーションなど、各作家の特性を活かし、その場所でしか成立しえないサイトスペシフィックな表現を追求しました。

    身体感覚を伴う鑑賞体験の設計

    数時間をかけて山道を歩く身体的な負荷を、作品の一部として設計しました 。木村充伯の彫刻を森に溶け込ませ、中﨑透の廃屋を丸ごと利用したインスタレーション、毛原大樹のラジオ作品を吉野山の各地に配置。歩く中で変化する光や音を感じながら、鑑賞者が五感を研ぎ澄ませていく流れを構築しました。アーティストと共に現場を歩き回り、コロナ禍における「安全な距離」を保ちつつも、作品との「親密な対話」が生まれるよう展示ルートを細かく調整しました。

    公共空間へのアートの介入と合意形成

    佐野文彦による建築的アプローチ、力石咲による編み物を用いたインスタレーション、oblaatによる詩のプロジェクトなど、既存の風景に新たな意味を付与する試みを支えました 。菊池宏子+林敬庸の杖のプロジェクトが全体を繋げ、地域の管理団体や住民との調整を丁寧に行い、公共性の高い自然環境にアートを介入させるための合意形成を積み上げました。社会情勢が不安定な中でも、地域とアートが手を取り合える持続可能な関係性を構築するプロセスを重視しました。

  • 困難な時代における新たな芸術祭モデルの提示

    未曾有のコロナ禍において、密を避けつつ精神的な深い体験を提供する「歩く芸術祭」というモデルを確立しました。大規模な集客を前提としないこの形式は、感染症拡大下における文化事業の画期的な成功例となり、社会情勢に左右されない芸術祭のあり方を世界に示しました。アートが非常事態においても人々の心に寄り添い、希望を照らす灯台のような役割を果たせることを証明しました。

    奥大和の価値再発見と深い没入体験の創出

    多様な作家たちの視点を通じて、奥大和の自然や歴史が持つ多層的な魅力が可視化されました。来場者は長い距離を歩き抜くことで、従来の美術館では得られない圧倒的な没入感と、自己の内面を見つめ直す貴重な機会を得ました。単なる観光地としての奥大和を超え、精神的な充足を求める人々が集う「心のなかの美術館」を確立しました。

    自発的な地域振興と継続への土壌づくり

    展示を通じて地域の隠れた価値が再定義されたことで、地元住民のシビックプライドが醸成されました。来場者が地域を深く体験した結果、土地に愛着を持つ「関係人口」が具体的に創出され、単発のイベントに終わらない継続的な交流の基盤が築かれました。この初年度の成功は、翌年以降の継続開催に向けた大きな自信となり、奥大和の可能性を拡張させました。

  • 展示会期:2020年10月3日(土)~11月15日(日)

    会場:奈良県 吉野町、天川村、曽爾村

    入場料:無料

    主催:奥大和地域誘客促進事業実行委員会、奈良県

    協力:株式会社ヤマップ

    プロデューサー:齋藤精一(ライゾマティクス・アーキテクチャー代表)

    キュレーター:山本曉甫(特定非営利活動法人 インビジブル 理事長)

    参加アーティスト:井口皓太、上野千蔵、oblaat(覚和歌子、カニエ・ナハ、谷川俊太郎、永方佑樹、則武弥、松田朋春)、菊池宏子+林敬庸、木村充伯、毛原大樹、齋藤精一、佐野文彦、力石咲、中﨑透、ニシジマ・アツシ、細井美裕 他

    [NARA] 北浦和也、小松原智史、坂本和之、武田晋一、西岡潔

    [NARA Program] 飯田華那、逢香、タカ ホリイ、松田大児

    グラフィックデザイン:合同会社 オフィスキャンプ

    広報:株式会社いろいろ 

記録写真

前へ
前へ

つむぐプロジェクト

次へ
次へ

くらしの美術館