くらしの美術館
ー 遠隔の共創 ー
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本プロジェクトは、新潟県上越市の直江津地区を舞台に、「くらし」を芸術の視点から捉え直すことを目的としたアートプロジェクトです。直江津のまちなかにある空き家や公共スペースを会場とし、アーティストが地域住民と対話を重ねながら作品を制作・展示しました。かつて北前船の寄港地として栄えた歴史や、人々の日常的な営みそのものを「美術館」に見立てることで、地域の新たな価値を発掘し、日常の風景を異化させる体験を創出しました。
プロジェクト期間:2020年6月-2021年3月
展示会期:2021年3月20日(土) - 3月28日(日)
会場:無印良品 直江津内「Open MUJI」 〒942-0004 新潟県上越市西本町3-8-8 直江津ショッピングセンター2F -
地域資源の深掘りと場の選定
直江津の歴史的背景や現状を深く知るため、入念なリサーチとフィールドワークを実施しました。かつての賑わいの中心であった旧銀行の建物や、空き家、さらにはまちなかの路地といった生活に密着した空間を展示会場として選定しました。表層的な観光スポットではなく、地域の暮らしの記憶が刻まれた場所を活動の拠点とすることで、土地の文脈に深く根ざしたプロジェクトの土台を構築しました。
アーティストと住民による「共創」の推進
外部から作品を持ち込むだけでなく、アーティストが地域に滞在し、住民との対話を通じて作品を形にするプロセスを重視しました。住民から思い出の品やエピソードを募ったり、技術協力を行ったりするなど、制作過程そのものをコミュニティの交流の場として設計しました。この「共創」のプロセスにより、アートが地域社会の綻びを埋め、住民が自らの暮らしを主客一体となって見つめ直す機会を提供しました。
遠隔手法と身体性を繋ぐ実験的アプローチ
新型コロナウイルスの感染状況に配慮し、物理的な距離を超えてクリエイティビティを共有する手法を模索しました。オンラインツールを活用した遠隔でのワークショップや打ち合わせを重ねつつ、最終的には直江津の現場で五感を通じた表現に落とし込むことで、制約下においてもアーティストの感性と地域の熱量を接続させる柔軟な運営プロセスを実践しました。
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「くらし」の価値再発見とシビックプライドの醸成
当たり前の日常や、見過ごされがちな地域の風景がアートとして提示されたことで、住民自身が自分たちの土地の価値を再認識する大きなきっかけとなりました。展示を訪れた人々からは「自分の町が違って見えた」といった声が寄せられ、アートが媒介となることで、地域に対する愛着や誇り(シビックプライド)が目に見える形で高まる成果を上げました。
まちなかの活性化と回遊性の創出
点在する空き家や店舗を会場としたことで、来場者がまちなかを歩き回り、直江津の空気感を直接体験する回遊性を創出しました。プロジェクト期間中には多くの人が街を訪れ、普段は静かな路地や商店に活気が生まれました。これは、アートが単なる鑑賞対象としてだけでなく、都市の遊休資産を有効活用し、地域の賑わいを再生させるための具体的な社会実装モデルとなることを証明しました。
継続的な対話プラットフォームの構築
プロジェクトを通じてアーティスト、地域住民、行政、運営側が対等に話し合えるネットワークが構築されました。一時的なイベントに終わらず、終了後も場所の活用方法や新たな表現について議論が続くなど、地域課題を創造的に解決するためのプラットフォームとしての基礎を築きました。目に見える作品だけでなく、こうした「見えないつながり」の創出こそが本プロジェクトの持続的な成果といえます。
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<プロジェクトメンバー>
アーティスト|内田友紀、ティンカリング(伊藤薫、川合真生、Leeanne Splatt)、田中文久、yoyo.
直江津の共創者|市村久子、小松光代、坂井芳美、ひぐちキミヨ、保坂清美、磯田一裕、宮崎太一、齊藤真奈美、小山祐子、小股郁子
運営協力|頸城自動車株式会社、株式会社マルケーエスシー開発、株式会社良品計画主催|くらしの美術館実行委員会 準備会
企画制作|The Chain Museum(林重義、森住理海)、NPO法人インビジブル(林曉甫・菊池宏子)
会場構成:ya.
会場構成協力:加藤亮介