つむぐプロジェクト

人と人、人と街、人とアートを紡ぐ

  • 「つむぐプロジェクト」は、2018年の六本木ヒルズおよび森美術館の開業15周年を機に始動したコミュニティ・エンゲージメント・プログラムです。商業的・国際的なイメージの強い「六本木」という都市において、あえてそこに住む・働く人々の「本音」や「心に宿る記憶」に着目。アーティスト菊池宏子氏のディレクションのもと、アートを触媒として、地域コミュニティの過去・現在・未来を「紡ぎ直す」ことで、都市生活に埋もれがちな人間らしい息遣いや、精神的な「ふるさと」を再発見することを目的としています。

    プロジェクト期間:2018年4月 - 2023年3月31日

  • 「共育の場」としてのコアメンバーによる共創

    プロジェクトの核となったのは、多様な価値観や生活スタイルを持つ地域住民やワーカーからなる「コアメンバー」との対話です。アーティストが一方的に教えるのではなく、感情が伝わる距離感で心を開き、共に学び合う「共育の場」を構築。メンバーそれぞれの独自性やアイデンティティを尊重しながら、六本木という街に潜む「人の心に宿る記憶」を丁寧に掘り起こしていくプロセスを重視しました。

    日常の断片をアートへ昇華する多角的なアプローチ

    「食」「音」「言葉」といった日常的な要素を入り口に、数々のプロジェクト(紡食、紡音、紡話など)を展開しました。例えば「紡話(つむぎばな)プロジェクト」では、六本木ヒルズの商業的なイメージの裏側にある、地域コミュニティの懐かしくも力強いオーラルヒストリーを映像アーカイブとして記録。都市生活の中に埋もれがちな個人の生き様や街の息遣いが感じられる作品として、街の記憶を再構築しました。

    変化をチャンスに変えるしなやかな展開(紡伝など)

    コロナ禍などの予期せぬ社会状況の変化においても、本質を見失わず、その時々で「できること」を真剣に考え抜きました。対面が叶わない状況を逆手に取り、顔の見えない中での会話や手書きの表現を取り入れた「紡伝(つむぎでん)プロジェクト」を実施。事前に企画したものではなく、想像力を最大限に発揮し合い、遠隔で関係性を循環・構築させる新しい共創の形をプロトタイプとして実装しました。

  • 「アート」を介した心の解放と創造性の発現

    最大の成果は、当初アートと疎遠だったコアメンバーたちが、活動を通じて自らの内側にある計り知れない発想力や創造力に気づき、心が解放される喜びを分かち合ったことです。「自分を信じ、仲間を信じる」ことで生まれた表現は、どんな著名なアーティストの作品にも勝るほど深く心に届くものとなり、参加者一人ひとりの精神的なレジリエンスを高める結果となりました。

    都市における「精神的なふるさと」の創出

    「京に田舎あり」という言葉が示すように、混沌とした都市・六本木の中に、誰しもが感情移入できる「ふるさとの原風景」のような繋がりを見出しました。活動を通じて育まれた深い理解や共感は、六本木を単なる消費の場ではなく、自分たちの記憶が息づく「精神的な拠り所」へと変容させ、都市における新しいコミュニティの在り方を提示しました。

    課題の(再)解釈による文化資産の蓄積

    単なる課題解決ではなく、街や人の在り方を「再解釈」し続けることで、目には見えない「感情や記憶」に焦点を作家としてあて続けました。6年間の探求を経て生まれた、コアメンバーたちの言葉による「つむぐ像」や映像アーカイブは、この街独自の暮らしの要素を未来へ繋ぐ貴重な文化資産となり、アーティスト自身の今後の活動指針となる大きな知見をもたらしました。

  • プロジェクトディレクター:菊池宏子 (アーティスト)

    企画協力:NPO法人インビジブル

    主催:森ビル株式会社

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