私の思い出

大切な思い出と共に
記憶を語る

  • 「私の思い出」は、震災から10年以上が経過した今だからこそ語ることのできる、一人ひとりの人生と記憶にフォーカスしたアートプロジェクトです。復興公営住宅に暮らす方々を主な対象とし、手元に残る「大切な一品」を入り口に、そのモノにまつわる個人的なエピソードを丁寧に紐解きます。凄惨な体験や無力感から心の奥に閉じ込めてきた思いを、対話を通じて少しずつ解きほぐし、個人のナラティブ(語り)として再構築することで、震災という大きな出来事の背後にある「生きた人間の物語」を可視化することを目指しています。

    プロジェクト期間:2023年9月-
    展示会期:2024年9月26日-10月14日
    会場:大熊町内

  • 「物」を媒介とした対話の場の創出

    いきなり震災の記憶を問うのではなく、参加者に自分自身を象徴する思い出の品を持ってきてもらうことから始めます。避難生活を共にした品や、一時帰宅で持ち帰った品、あるいは失われた記憶の中にある品。それらについて語る「脱線」や「曖昧さ」を許容するゆったりとした対話の時間を通じて、人生観や震災当時の状況、そして現在の心境へと深く潜っていくプロセスを大切にしています。

    記憶の尊厳を写し出すポートレート撮影

    インタビューと並行して、参加者が思い出の品を手にした姿を撮影します。単なる記録写真ではなく、その方の人生の歩みに対する敬意を込め、時には「遺影にも使えるような綺麗な写真を」と提案しながら、最もその人らしい表情を切り取ります。この撮影行為自体が、参加者が自身の人生を肯定し、誇りを持って社会に提示するための重要な儀式的な役割を果たしています。

    公共空間への展開と多層的な共有

    収集された語りと写真は、展示やWeb、時には屋外広告物などを利用したインスタレーションとして展開されます。個人の私的な記憶をあえて公共空間へ接続することで、外部から固定化されがちな「被災者」というイメージを塗り替え、地域内外の人々が土地の歴史や他者の人生に多層的に触れる機会を創出します。

  • 「語れない思い」の解放と自己肯定感の向上

    「自分の人生に語ることなんてない」と口にする方々が、大切にしている物を通じて饒舌に語り、撮影に喜んで応じる姿が見られました。自身の経験を言葉にし、それが記録として残されるプロセスは、閉じ込めていた感情の枷を外し、未来へ一歩踏み出すための精神的なエンパワメント(心の復興)に大きく寄与しました。

    土地への愛着を再構築するアーカイブの蓄積

    急速に風景が変わり、過去との繋がりが希薄になりがちな浜通りにおいて、震災前の暮らしを知る人々の記憶を記録し続けることは、土地のアイデンティティを守る極めて重要なアーカイブとなりました。これらは、新しく移り住んだ人や訪れる人が、この地域に対してより深い想いと想像力を育むための共通の文化資産となっています。

    孤立を防ぎ、社会との新たな繋がりを共創

    特に独居高齢者など、社会的に孤立しやすい方々がプロジェクトを通じて他者と対話し、自身の物語を外に発信する機会を得たことで、新たな社会との接点を創出しました。世代や居住歴を超えて個別の理由や葛藤を知るきっかけとなり、浜通りという場所が持つ多様な想いを共有し合える、しなやかなコミュニティの土壌を育みました。

  • 撮影:吉田和誠、西野正将、鈴木穣蔵

    主催:NPO法人インビジブル

    令和5年度富岡町心の復興補助金と、、令和6年度HAMADOORI CIRCLE PROJECTの一環として実施しました。

活動写真

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