MINDSCAPES TOKYO

アート・文化的な視点と実践から、
「メンタルヘルス」に関する理解や対処、議論を
根本的に問い直す

  • “科学だけではこの仕事はできません。アーティスト、作家、キュレーター、デザイナー、映画制作者など、文化的実践者と密接に協力し、幅広い分野や専門的背景を持つ人々を集め、一人ではできないことを一緒に実現していきたいと思います。”

    ダニエラ・オルセン(ウェルカム・トラスト 文化パートナーシップ責任者)

    マインドスケープス(Mindscapes)は、アート・文化的な視点と実践から、ウェルカム・トラストが掲げる3つの健康課題の1つ「メンタルヘルス」に関する理解や対処、議論を根本的に問い直すことを目的に、ニューヨーク(アメリカ)、ベンガルール(インド)、ベルリン(ドイツ)、東京(日本)の世界4都市のパートナーが相互に連携している国際的な文化プログラムです。

    世界では、毎年4人に1人が何らかの「心(こころ)」の問題を経験すると言われています。ウェルカムが力を注ぐメンタルヘルスの分野では、脳、身体、環境がどのように相互作用するのか科学的理解を深め、精神衛生上の問題の中で最も一般的かつ深刻な症状である不安、うつ、精神病にかかわる研究に資金援助を行っています。また、迅速かつ効果的な対応方法の究明に重点を置きながら、科学的、社会的、文化的な側面から総合的にアプローチしています。

    マインドスケープスは、メンタルヘルスにおいて、科学、社会、文化の関連性を高める機会として2020年に始動しました。アーティスト・イン・レジデンスを始めとした様々な文化芸術活動を通して、異なる環境で生活する人々やコミュニティが直面する心の問題に、種々の課題と向き合いながらいかに新しい視点を提供できるか検証するための試みです。

    また、マインドスケープスの大きな特徴は、各パートナー都市の文化的背景を踏まえ、異なる文脈における「メンタルヘルス」の解釈や課題への取り組みに対し、自主性を重んじる姿勢を尊重することです。そして、専門的な知識や実践における多様な形態を認めた上で、一人ひとりの「生きた経験(Lived Experience)」を大切にしています。 専門性の枠や経験値に捉われず、それぞれの人の営みや日々の経験に基づいた意見と考えを交換し、コミュニケーションを通じてわかり合う機会を設けることで、本質に触れた新たな発見・発想が生み出されると考えています。 

    このような背景を基に、2022年からスタートした「マインドスケープス東京」は、インビジブルが共同主催者として、日本の都市のメンタルヘルスを多角的な視点で考える対話集会「コンビーニング」、並びに、アーティストとユースが共同でメンタルヘルスについて探究する実験的アートプロジェクト「UI都市調査プロジェクト」の両事業の企画運営を担っています。また、森美術館で開催された「地球がまわる音を聴く:パンデミック以降のウェルビーイング」展の参加作家、飯山由貴さんの作品《影のかたち: 想像された共感》は、マインドスケープスの一環であるアーティスト・イン・レジデンスの助成を受けて制作されました。

    インビジブルは、本活動の経験と学びを数年かけて熟成させ、プロトタイプとなるプロジェクトの立ち上げを構想しています。現在パンデミックや自然災害によって、私たちを取り巻く社会と生活環境は大きく変化しています。この状況に応答する芸術的実践のあり方を、「こころ(心)」の健康の課題を抱える地域や団体と連携を深めながら、長期的な視野で“日本的な”メンタルヘルスへのアプローチを探究することを目指します。

    「こころの風景たち」とも意訳できるMindscapes。

    一人ひとりの心には、それぞれの経験からしか見えない景色があります。多様性を尊重し、アートや文化的な視点があるからこそ表出されるものがあると確信しています。

    プロジェクト期間:2021年4月-2023年3月
    展示会期:2023年2月20日-28日
    会場:YAU STUDIO(東京都千代田区有楽町1-10-1有楽町ビル10F)

  • 対話集会と都市調査の二本柱による進行

    プロジェクトは主にコンビーニングと呼ばれる対話集会と、都市調査プロジェクトの二本柱で進行しました。メンタルヘルスの問題を医療の枠組みに閉じ込めず、対話と調査という社会的なアプローチを通じて多角的に掘り下げていく構造を確立しました。

    専門家とユースによる実験的な共同調査

    映像や建築、食、記録の4つのチームを編成し、各分野の第一線で活躍するアーティストがリード調査員を務めました。そこに高校生世代のユース調査員が加わり、約半年間にわたる実験的な共同調査を実施することで、世代を超えた多角的な視点をプロジェクトに組み込みました。

    フィールドワークを通じた共創プロセス

    茶室や市場、防災センターなどの具体的な都市の断片に触れるフィールドワークを実施し、ふつうとは何かといった根源的な問いを深めました。教える側と教わる側という上下関係を排し、アーティストとユースが対等な立場で共に悩み、対話を通じてこころの風景を形にする共創の形を重視しました。

  • 多様な専門分野による表現の具現化

    有楽町で開催された展示ウィークでは、各チームの探究が具体的な形として発表されました。食チームによる心を整えるための作法の開発や、建築チームによる仮想現実を用いた空間制作、映像チームによる対話を基にした作品展示など、アートの視点からメンタルヘルスを捉え直す多様な成果物が提示されました。

    ユースの主体性とコミュニティの形成

    プロジェクトを通じて若者自身が企画や運営を担うフェスティバルが開催されるなど、主体的なコミュニティが形成されました。単なる参加者に留まらず、自ら場を動かす経験を得たことで、世代を超えて対等に意見を交わし合える独自のネットワークが構築されました。

    自己変容と社会実装へのモデル提示

    最大の成果は参加した若者たちが否定されない場での活動を経て、自己や他者への理解を深めたという内面的な変化にあります。この取り組みは一時的なイベントに終わらず、日本における心の健康の新たな語り方や、アートを用いた社会課題解決の先駆的なモデルを提示しました。

  • 参加アーティスト:上野千蔵、林敬庸、yoyo.

    プロジェクト統括アーティスト:菊池宏子

    チーフマネージャー:磯谷香代子

    マネージャー:荒生真美

    プロジェクト・コーディネーター(インターナショナル・リレーション、MTWユース実行委員会):富樫多紀

    プロジェクト・マネージャー(UI都市調査プロジェクト):戸塚愛美

    プロジェクト・スタッフ:イ・ユビン

    プロジェクト・スタッフ:ミ・ショシン

    インターン:唐川麻祐子

    映像ディレクター:西野正将

    撮影:西野正将、玄宇民

    写真:冨田了平

    アートディレクター:田中せり

    編集:中村志保

    ライター:白坂由里、杉原環樹

    マインドスケープス・キュレトリアル

    リサーチ・フェロー: 登久希子

    プロデューサー:山本曉甫

    スペシャルサンクス:秋元菜々美、葛西優香、葛西啓之、佐藤有佳里、下枝浩徳、椙山由香、森健太郎、humunus (キヨスヨネスク、小山薫子)

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