SENSE ISLAND 2019

感覚の島

  • 「Sense Island 2019」は、横須賀市に位置する東京湾最大の無人島「猿島」を舞台に開催された、夜間のアートプロジェクトです。日本遺産にも指定されている猿島の歴史的な遺構や豊かな自然を背景に、「暗闇」という状況を活かして人間の五感を呼び覚ますことを目的として始動しました。山本は、本プロジェクトにおいてアーティストのキュレーションを担当。齋藤精一氏(プロデューサー)らと共に、無人島の持つ場所の力と、来場者の内面的な感覚を接続するための作家選定と作品配置の設計を担いました。

    会期:2019年11月3日(日) - 12月1日(日) 木金土日及び祝休日の18日間 17:30 - 21:30
    会場:猿島一帯(神奈川県横須賀市猿島1番)

  • 島の文脈を紐解くアーティストの選定

    キュレーションのプロセスにおいて、単に作品を展示するのではなく、猿島の歴史や地質、伝説といった「土地の物語」を深く理解し、表現に昇華できるアーティスト鈴木康広、佐野文彦、後藤映則、菊池宏子を選定しました。そうしたアーティストらと現地の入念な視察を重ね、島に潜む不可視な要素を可視化するための対話を重ねました。

    没入感を高める鑑賞導線の設計

    夜間の無人島という特殊な環境下で、来場者が「自身の感覚と対峙」できるよう、スマートフォンを封印するデジタルデトックスの仕組みや、島内を巡る順路に応じた作品の配置を緻密に設計しました。視覚を制限された暗闇の中で、音や光、風の気配を作品の一部として感じるような配置をキュレーションによって構築し、島全体を一つの大きな感覚体験の場へと変容させました。

    多ジャンルの表現による空間の異化

    メディアアート、建築、彫刻、パフォーマンスといった多様なジャンルの作家をキュレーションすることで、猿島の多面的な魅力を引き出しました。軍事要塞としての過去を持つ切通しや、レンガ造りのトンネル、鬱蒼とした森といった特定のスポットに対し、それぞれの空間特性を最大限に活かす表現をマッチングさせることで、歴史的遺構に現代の視点から新たな解釈を加えるプロセスを実践しました。

  • 猿島の新たな文化的価値の創出

    日没後の猿島という、通常は立ち入れない時間と場所をアートによって開放したことで、新たな観光資源・文化的価値としての側面を提示しました。行政や地域団体との連携を通じ、歴史的遺産を保存するだけでなく、「活用」しながら次世代へと語り継ぐための持続可能な文化事業のモデルを確立しました。この成果は後に、グッドデザイン賞を受賞するなど、社会的に高く評価されました。

    五感を通じた深い鑑賞体験の提供

    「スマートフォンを預ける」というキュレーション上の仕掛けと、闇に溶け込む作品群の融合により、現代人が日常で失いがちな「生物としての直感」を取り戻す場を創出しました。来場者からは、場所の記憶と自身の感覚が一体化するような深い没入体験に対して多くの共感が寄せられ、単なるエンターテインメントを超えた「思索の旅」としての芸術祭のあり方を実現しました。

    継続的なプロジェクトへの基盤構築

    2019年度の初開催におけるキュレーションの成功は、その後の継続的な開催に向けた強固な基盤となりました。アーティストが土地の力に敬意を払い制作する姿勢や、来場者のマナーと意識の高さは、環境負荷を抑えつつ地域魅力を発信する「暗闇の美術島」という独自のブランドを形成し、横須賀市を代表する文化イベントの一つへと成長させる成果を上げました。

  • 参加アーティスト:菊池宏子、後藤映則、齋藤精一(ライゾマティクス・アーキテクチャー)、佐野文彦、鈴木康広、スティーブン・ノムラ・シブル、 マシュー・シュライバー、WILD DOGS ※五十音順  井原希子、大倉慶乃助、栗林祐輔、平井優子

    タイアップアーティスト:Atachitachi、鮫島慧、博展 ※五十音順

    プロデューサー:齋藤精一(株式会社ライゾマティクス代表取締役)

    アドバイザー:中野仁詞(公益財団法人神奈川芸術文化財団学芸員、資源芸術マネジメント研究所理事・研究員)

    キュレーター:山本曉甫(NPO法人インビジブル理事長、マネージングディレクター)、高橋龍(音楽キュレーター、プロデューサー)、原瑠璃彦(日本学術振興会特別研究員)

    主催:横須賀都市魅力創造発進実行委員会

記録写真

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