PinSプロジェクト
教えない教育 =
偶然性が生まれる環境
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PinS(Professional in School)プロジェクトは、福島県富岡町において2018年度から継続されている、アーティストや建築家、音楽家などのプロが学校に「転校生」として滞在する教育活動です。NPO法人インビジブルと富岡町教育委員会が連携し、震災後に再開した小中学校を舞台に、プロが自身の仕事を校内で展開する「教えない教育」を実践しています。大人が真剣に何かに向き合う姿を日常的に見せることで、子供たちの自発的な好奇心を刺激し、学校を新たな文化が生まれるコミュニティの拠点へと変容させることを目指しています。
プロジェクト期間:2018年4月
会場:富岡町立富岡小学校・中学校(福島県双葉郡富岡町小浜中央237-2) -
プロフェッショナルが「転校生」として長期滞在する
第一線で活躍するプロが、数ヶ月から1年という期間、学校に「転校生」として入学します。彼らは校内に専用の仕事場を構え、授業中も自身の創作活動に没頭します。先生として教えるのではなく、同じ学校生活を送る一人の大人として存在する「非日常の日常」を創り出します。
「教えない」ことで子供の自発性を引き出す
プロは子供に指示を出さず、子供たちが興味を持って近づいてくるのを待ちます。休み時間などに自発的にアトリエを訪れた子供たちは、プロの技を観察し、時には自ら手伝いを買って出ます。この余白のある設計が、指示待ちではない「自分で考え、動く力」を育むきっかけとなります。
土地の記憶を未来へ繋ぐ作品を共創する
滞在の結実として、地域の歴史や記憶を反映した作品を共に作り上げます。町内の倒木を使ったテーブルや、富岡の風景を描いた絵画、そして子供たちの言葉を紡いだ新しい校歌など、制作のプロセスそのものが学校や地域の共有財産となり、新たなアイデンティティとして定着していきます。
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自己肯定感の向上と多様な居場所の創出
プロとのフラットな出会いにより、不登校傾向の生徒が自信を取り戻すなど、子供たちの自己肯定感が大きく高まりました。教室以外の場所に「自分を認めてくれる大人」がいることで、多様な個性が尊重される安心感のある居場所が学校の中に生まれ、子供たちの精神的な支柱となりました。
震災後の分断を乗り越える「新しい文化」の誕生
学校統合という難しい時期に、子供たちがプロと共に作った「新しい校歌」は、震災後の複雑な背景を持つ地域の人々を一つに繋ぎました。大人から与えられたものではない、自分たちで紡いだ歌や作品は、地域の未来を自らの手で描いていく誇りと、強い帰属意識を醸成する大きな力となりました。
学校を核とした新しい地域コミュニティの確立
「教えない教育」という実験的な試みを通じて、学校が単なる学習の場を超え、社会や地域と地続きの文化拠点へと進化しました。このモデルは、教職員や保護者の意識をも変え、困難な状況下でもアートを触媒に他者と共創し、しなやかに未来を切り拓くための知見となっています。
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プロフェッショナル転校生
2018年度: 林 敬庸(大工)
2019年度: 加茂 昂(画家)、宮島達男(現代美術家)
2020年度-2021年度: 大友 良秀(音楽家)
2022年度:小池晶子(デザイナー)
2023年度:力石 咲(美術家)
2024年度:三原聡一郎(アーティスト)
2025年度:川村亘平斎(影絵師・音楽家)
企画運営:NPO法人インビジブル
主催:富岡町